研究系及び研究施設の現状 137
分子クラスター研究部門(流動研究部門)
高 須 昌 子(助教授)
*)A -1)専門領域:物性理論、計算機シミュレーション
A -2)研究課題:
a) ゲル生成過程の研究
b)ヒアルロン酸中の拡散のシミュレーション c) ベシクルの分裂過程のシミュレーション
A -3)研究活動の概略と主な成果
a) 化学ゲル生成に関してシンプルなモデルを使って機構を研究する。特に,分子内架橋を許す場合と許さない場合で のゲル生成の違いを研究した。
b)細胞外マトリクスは,組織の形態形成や修復,代謝に関係して重要な役割を果たす。細胞外マトリクスの1つの例と してヒアルロン酸に注目し,拡散現象のシミュレーションを行う。方法としては B rownian dynamics を用いる。ヒア ルロン酸の網目の間を粒子が拡散する。温度が上げると拡散はヒアルロン酸の動きに阻害されて,拡散定数は温度 の関数として単調増加しないことがわかる。粒子半径に対する依存性も求めた。粒子が通過する際のヒアルロン酸 のモードを計算している。
c) 生体内ではウイルス感染やタンパクの輸送などで,ベシクル(2分子膜でできた小胞)の融合,分裂が頻繁に起こっ ている。しかし,分子レベルでの融合,分裂過程は十分理解されていない。
そこで,2001年は粗視化した両親媒性分子を用いた分子シミュレーションを使って,ベシクルの自発的な融合過程につい て研究した。2002年は球状粒子の吸着や力学的な力によるベシクルの分裂過程について研究した。どちらの分裂において も,融合で見られたstalk中間体が準安定状態として存在することが明らかとなった。また,粒子がstalk中間体に吸着すると
膜融合を促進することがあることもわかった。
B -1) 学術論文
H. NOGUCHI and M. TAKASU, “Structural Changes of Pulled Vesicles: a Brownian Dynamics Simulation,” Phys. Rev. E 65, 051907, 1–7 (2002).
H. NOGUCHI and M. TAKASU, “Adhesion of Nanoparticles to Vesicles: a Brownian Dynamics Simulation,” Biophys. J. 83, 299–308 (2002).
B -3) 総説、著書
高須昌子、野坂誠 , 「ゲル生成過程のモンテカルロシミュレーション」, 日本化学会情報化学部会誌 20, 86–87 (2002).
B -4) 招待講演
M. TAKASU and J. TOMITA, “Simulation of Diffusion in Extracellular Matrix,” Seminar at University of California, Berkeley, December 2002.
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高須昌子 , 「高分子のシミュレーション」, J A IS T - 金沢大学研究プラザ第2回研究会 , 北陸先端大学 , 石川 , 2002 年 10 月 .
B -5) 受賞、表彰
高須昌子 , 分子シミュレーション研究会学術賞 (2001).
B -6) 学会および社会的活動 学協会役員、委員
分子シミュレーション研究会 幹事 (2001.12-2003.11). 高分子学会計算機科学研究会 運営委員 (2002-2003). その他の委員
NE D O 技術委員 (2002).
C ) 研究活動の課題と展望
生体系に関するシミュレーションは今後大いに発展する分野であると考えられる。拡散現象や形態変化を中心に,今後も研 究を進めて行きたい。
*)2002 年 4月 1日金沢大学理学部助教授